江戸時代の短編怪談「怪を話せば怪いたる」百物語のルールと方法


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江戸時代の本より

  • 百物語をするには法式があり、青い紙を貼った行灯と、100本のロウソクを使う.
  • 言い伝えでは百物語をすると、必ず恐ろしいことや奇妙なことが現実に起こるという。

【出版年】寛文六年(江戸1661年)
【著者】浅井了意
【書名】伽婢子
【タイトル】恠を話ば恠至(かいをかたればかいいたる)

昔より人のいひ傳へし怖ろしき事、恠しき事を集めて百話すれば、必ずおそろしき事、恠しき事ありといへり.百物語には法式あり.月暗き夜行灯に火を点じ、其行灯は青き紙にてはりたて、百筋の灯心を点じ、一つの物語に、灯心一筋づつ引とりぬれば、、、、

昔から人が言い伝える恐ろしい事、奇妙な事を集めて百話[ひゃくものがたり]すると、必ず恐ろしいことや奇妙なことが起こるという。

百物語には法式がある。

月が暗い夜に、行灯[あんどん]へ火をともし、その行灯には青い紙を貼りつけて、100本の灯心[蝋燭のしん]に火をつける。
1つの物語ごとに灯心を1本づつとっていけば、室内は段々と暗くなり、青い紙の色は移り変わって、なんとなく気味が悪くなる。

さらに語り続ければ、必ず奇妙な出来事や恐ろしい事が起こるという。


下京[しもぎょう]の辺りに住む者が、5人集まり、百物語でもしてみようではないかと試したことがある。

法式の通りに火をともし、各々青い小袖[着物]を着て、座りながら語ること6,70話にもおよぶ。そのとき季節は12月の初旬、外には風の激しく吹いて雪が降り、寒さは日ごろに増して強く、髪の毛を根本よりかきむしるように、ぞっとするほどであった。


すると窓の外に火の光がちらちらと見えて、蛍が数多く飛んでいるかのように見えたとたん、幾千万ともわからない光が部屋の中へ飛んで来て、鏡や鞠[まり]のように丸く集まり、再び別れ、くだけ散って形を変える。

やがて白く固まった光は、長さ五尺[1.6m]ばかりになって広がり、天井に張り付いて、そのまま畳の上にどんと落ちた。

その落ちる音は雷を鳴らしたようであり、そして光は消えた。

5人は皆これによって気を失った.家にいた他の者達が気付いて、色々介抱して抱き起こせば、じきに目を覚まして特に怪我もなかったという。


ことわざに言う、
「白日[はくじつに人を談ずる事なかれ。人を談ずれば害を生ず。昏夜に鬼を語ることなかれ。鬼を語れば怪いたる。」
[昼間に人の話をしてはいけない、人を話せば害を生む。夜更けには鬼のことを語ってはいけない、鬼を語れば怪しきものが現れる。]


恐らくそれは、この時のようなことを言ったのであろう。

実話の怪談

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