「人に存するものは恥の心よりよきはなし」熊沢 蕃山の名言と思想


この記事は4分で読めます.

熊沢 蕃山の本より

子供が人見知りしないのは長所ではない.人見知りする子供は恥の心を理解していて、働きがある人になるという事.

【出版年】明治25年[1892年]
【著者】熊澤 伯継[熊沢 蕃山]
【書名】中学読本
【タイトル】恥の心

、、、其の上、平人の利発と云ふものは、大方、鈍なるものなり.わらはべの爪ぐはへして赤面し、人前にて、物言ひかぬるは、知明にして恥の心ある故なり.人に存するものは、恥の心よりよきはなし.、、、

とある人が言うには、今の幼い子供は大体才知や芸能が優れている子が多い。それだというのに、世間一般の人が次第に劣って行っているのは、不思議なことであると。それに答えて、確かにそうであると。

田に植える稲も、晩稲(成熟が遅い稲)ほど取れる実も多い。今時の子供が利発であるのは、稲の早稲(早く熟する稲)の様である。大人になっていくほど、知恵の取り実が少ない。

その上、凡人の利発と言うものは、おおかた鈍い人なものである。
子供が爪を加えて顔を赤くし、人前で物を言い出せないというのは、賢くて「恥の心」があるゆえである。

人にあるもので、恥の心より良いものはない。

恥の心が明らかであるものは、学問をしてみれば君子の地位にもいたり、たとえ無学でもいつもは人柄が良く、いくさの中では武勇の働きがあるものである。
昔の子供達には、爪をくわえる者が多かったゆえに、大人になるに従ってひとかどの役に立つものがあった。
今の子供は人見知りをしない。人前でも利発にものを言って、立ち振る舞いもよい。これ故に大人になるほど、役に立つ人としてとるべき人が少ないのである。

人の親である者が道徳を知らなければ、恥の心ある子供をしかりつけて、恥の心をなくしてしまい、恥の心の無い子供をほめ愛して、いよいよ誇らせてしまう。

才能は日々に衰えて、わがままは日々に進む。悲しむべきである。

熊沢蕃山の思想の本

コメントを残す