明治時代、三島彌太郎がパリの理髪店でパーマにされる笑い話.


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長田秋濤の本より

明治時代、フランスのパリに滞在していた三島彌太郎子爵が、友人にイタズラされて、理髪店でパーマをあてられてしまった笑い話.

【出版年】明治35年[1902年]
【著者】長田忠一[長田秋濤]
【書名】洋行奇談 新赤毛布
【タイトル】子爵の今羅漢

ほぼ原文まま

子爵三島彌太郎氏が病気になって、パリに滞在中の事である.
おいおい病気が良くなったので、一日久しぶりに散髪をしようと考えて、これを同じ宿の友人○○氏に相談した.

友人も賛成して、幸い天気もよし.病人がブラブラ出かけるには適当のひよりだからと、友人は一緒に通訳がてら理髪所にでかけたが、満員でほとんど座る席がない.
しかし、病人のことだし待たせるわけにも行かないから、友人は理髪店の主人に頼んで、鏡の無いところでもよろしいから早く散髪してくれと頼んだ.

主人も快諾して、他の客を後回しにして仕事にかかり始めた.
友人はしきりに三島子爵の容貌を熟視していたが、ふと思いついたのは、子爵の眼光の鋭さ、髪型をパリ風にちぢらしたら必ず面白い配合が出来るだろうと、わるじゃれを考え、散髪が済んだのち、三島氏には話さずに主人に縮れ毛を命じた.

子爵の前には鏡もない、なので何をされるかさらさら分からない.
理髪店の主人がなすままにほったらかしにして置いた所、ようやく終わったので、お金を払って店を出た.

友人はひとり胸の中でクスクス笑い、今になんと言い出すかと思いながら、互いに連れ立って家に帰った.

部屋に入って子爵は帽子を脱ぎ、鏡に向かうとこれはいかに、自分の頭が縮れ毛になった姿にびっくりして、
「おい、君.どうしたのだ.僕の頭はちぢれ上がってしまった.伸ばす工夫はないか?また君のわるじゃれだろう、しようがないな.」
と、くしで何度かといても伸びようとしない.

友人はおかしさをこらえて、
「君、実に立派な紳士になったよ.どうみても舶来の羅漢とは君の姿の事をいうのさ.写真でも撮って、日本へ送りたまえ.アハハハハ.」

図解300 明治・日本人の住まいと暮らし モースが魅せられた美しく豊かな住文化

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